こんな人には英語が使えて欲しいのです:

以前、TOEICを受けた時の感想として、

私の経験する範囲では、

International communicationとしての英語は

TOEIC英語とはだいぶ違う、

という話を書きました。

 

TOEICを受けてきました。役立ちそうです。

 

英語教育の話はみなさんお好きなようで、

(まあ私もその一人ですが)、

今日は「どんな人に英語がいるのか」について、

先日の体験から、ちょっとだけ書いてみます。

 

5月半ば、

マレーシアの共同研究者の皆さんと、

北九州の見学に行ってきました。

 

北九州市はいわゆる「環境都市」として有名。

特にリサイクル技術の開発とリサイクル工場の集積で、

業界では外国の方にもよく知られています。

(ただ、若干名前が憶えづらいのが・・・)

 

さて。

 

訪問先は次の三つ。

 

・北九州エコタウン http://www.kitaq-ecotown.com/

 

・北九州市環境ミュージアム http://eco-museum.com/

 

・北九州市スマートコミュニティニティ

http://www.city.kitakyushu.lg.jp/kankyou/file_0325.html

 

いずれの訪問先でも非常に案内慣れされており、

見学や説明の手順、小道具などもよく準備され、

視察の受け入れとしては大満足でした。

 

ただし、言語を除いて。

 

英語の説明資料等は用意されていたのですが、

説明・案内担当の方はいずれの行き先でも日本語のみで話し、

同行した日本人で逐次通訳することになりました。

 

いえ、別にいいんです、通訳すること自体は。私は。

そういう機会はよくありますし、

通訳をするのが嫌だというわけではありません。

それに翻訳をするとよく頭に入りますし。

 

でも、伝えるほうから見て、いまいちだと思うのですよ。

 

まず、それにあたる人がよい通訳者であるかどうか、分かりません。

 

プロの通訳さんがつくのであればよいですが、

同行した「英語のわかる日本人」程度では、

通訳の品質(スピード、語彙、正確さ、分かりやすさ等)は、

でたとこ勝負です。

 

通訳を担当する人が対象についてよく知っていれば、

そこそこの水準は達成できるかもしれませんが、

それも運次第になってしまいます。

 

今回は私ともう一人で通訳をしましたが、

いくつかの専門用語についてはその場ですぐに浮かばないか、

そもそも知らなかったかして詰まってしまいましたし、

もとの意味するところを正確に伝えられた自信もありません。

 

(事前に準備しておけばよかったのですが、

 今回は当日その場に行くまで考えていませんでした。

 これ自体は私たちの準備の課題ですが、

 同じようなことはよくあるでしょう。)

 

ですので、もちろん一生懸命通訳しましたけれど、

北九州の方々の側からみると、

やはり日本語で日本語話者に伝えるのよりは、

いくぶん品質が落ちてしまったであろうと思います。

 

 

次に、時間がかかります。

 

同時通訳のような器用なことは出来ないので、

ある程度お話していただいたらいったん止めて、

その分を翻訳して、またお話を再開して、

となります。

 

同じ情報量を伝えるのに、

普通にひとつの言語で話すよりも、

2倍の時間がかかります。

 

お互い時間は限られているわけで、

これはどう考えてもよいことではありません。

 

 

最後に、聴衆の注目が通訳のほうに集まります。

 

お客さんから通訳を募って、とすると、

通訳自身がほんとうは聴衆なわけです。

発表者は(今回の場合は)北九州の方々。

 

ところが、こういう調子で通訳をかますと、

聴衆は通訳により注目するようになり、

本来の発表者・案内者への注目度が下がります。

 

特に質疑のような「やりとり」が直接出来ないと、

通訳に向かって話しかけるようになってしまいます。

 

オリジナルの表現に含まれていたニュアンスや、

迫力、興味の強さ、強く訴えたい気持ちなどが、

伝わりづらくなってしまうでしょう。

(なんせ通訳も素人通訳なわけで)

 

これは、わざわざその場に行ってその場の人から話を聞く、

ということの価値を減じてしまうと思うのです。

 

 

北九州のようなケースでは、

有名事例ですし、説明の機会も多いでしょうし、

今回伺ったところでは外国からの見学者も非常に多い、

とのことでした。

(それで英語資料もあるわけです)

 

説明担当者が英語で説明できるだけで、

上に挙げた諸問題は解決します。

 

コストがそれに見合うのかどうか、には自信はありませんが、

第一歩としては比較的低いコストで出来ることもあります。

 

例えば英語の台本をつくる。

 

ほとんど定型の説明で、日本語の台本はあるわけですから、

いったんそれを英語に訳せばずっと使えます。

配布・映写資料は英語のものがあるわけですから、

台本の英訳だって出来るでしょう。

 

 

 

英語教育アレコレについては、私自身は、

「ほとんど、たぶんなら90%くらい、の人には、

 業務レベルの英語は必要ないだろう」

と思っています。

 

そして、今回とりあげた北九州の環境関連施設のような、

 

「世界のいろいろな国の人たちに売り込みたい」

 

と思っているところで、

そのいろいろな国の人たちと接する人は、

残りの10%のほう。

 

英語で意思疎通できる能力はあったほうがいい。

断然いい。

 

 

以上、どんな人に英語が使えてほしいか、でした。